ジオ・リテラシーとは?

ジオ・リテラシー(Geo-Literacy)。おそらく、皆さんは初めて聞く言葉だと思います。

そもそも、リテラシー(Literacy)とは、「読み書き」に対する能力を示しています。現代であれば、書物や新聞を読むこと、文章を書くことはもちろん、IT機器を使って文章を書いたり、文章を書くために情報を調べる(検索する)ことも重要なリテラシーといえるでしょう。

では、ジオ・リテラシー(Geo-Literacy)はどんな能力を指すのでしょうか?おそらく、「ジオ(Geo)という単語から、地図を読む能力(読図能力)を指すのでは?」、と思われるかもしれません。もちろん、皆さんが小学校から学んできた地図(特に地形図)を読む能力も大事かもしれません。ただ、皆さんにとって、地図(地形図)は、それほど身近なものでしょうか?山登りやサイクリングなどが好きな人は身近なものかもしれませんが、ほとんどの人にとって地図は日常生活とあまり関係がないかもしれません。

しかし、現代の生活を送るうえでは、ジオ・データ(Geo-data)が不可欠な要素となっています。ジオ・データ(Geo-data)を上手く活用することにより、皆さんの生活がより良いものになるかもしれません。あるいは、ジオ・データ(Geo-data)を上手く利用できなかった、あるいは間違って利用してしまうことによって多大な不利益を被るかもしれません。つまり、ジオ・データ(Geo-data)を上手く扱うための能力のことをジオ・リテラシー(Geo-Literacy)といいます。

ジオ・データ(Geo-data)?また、聞き慣れない言葉が出てきましたね・・・。読んで字のごとく、「地理」、あるいは「空間」のデータとなります。「地理」データ?、「空間」データ?…。「自分の生活に関係ない!」と、思う人もいるでしょう。でも、よくよく考えてみれば、私達は様々なジオ・データの中に囲まれて生活しています。例えば、皆さんはスマートフォンで、Google MapsやYahoo Mapを見る機会がありませんか?もちろん、これらの地図アプリの中には、道路や建物などのジオ・データが含まれています。また、天気予報を見る機会はありませんか?もちろん、天気や気温なども天候の状態を示す立派なジオ・データといえるでしょう。何かの状態や状況を示すジオ・データとして空間線量が考えられます。

以下の表(テーブル)は2011年3月20日8時における福島県における空間線量の値を示したものです。

Fukushima_Rad

(出典:『福島県平成22年度 環境放射能測定値(暫定値)』https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec_file/monitoring/m-0/sokuteichi2011.3.20.pdf)

皆さん、このテーブルの数値を一目見て、何か理解できることがありますか?例えば、飯館村や福島市では空間線量が高そう、などが分かると思います。でも、福島市と飯館村との位置関係や、福島県内全体での空間線量の分布について理解できますか?おそらく、福島県に土地勘がないと、これらのことをすぐに理解することは難しいと思います。

一方、以下の地図を見てください。

20110320_福島県_放射能_800

この地図を作製した目的は2つあります。

1つ目. 福島第一原発から各自治体までの距離を把握したい。したがって、福島第一原発から同心円を10㎞ずつ描画しています(専門的な用語でいうとバッファ(Buffer)を作製しています。

2つ目. 空間線量の分布を把握したい。したがって、先ほどのテーブルの値を地図上に表示しています(専門的な用語でいうとラベリング(Labeling)表示しています)。

この地図を見て、何に気付きますか?おそらく2つのことに気付くかもしれません。

1つ目. 空間線量の値の高さは、原発からの距離と比例しない。例えば、原発から40㎞付近にある、いわき市、田村市、飯館村の空間線量に注目してください。

2つ目. 原発から北西方向に対して空間線量が高い傾向がみられる。飯館村や福島市の空間線量に注目してください。

いかがでしょうか?先ほどの表で表示された空間線量のデータに比べて、空間線量の地域的な分布状況がある程度把握できたと思います。この空間線量の分布図では、原発からの距離という「ジオ・データ」と、ある地点の空間線量という「ジオ・データ」を1つの地図上で同時に表示することで、テーブルに記載されている数値情報と比較して、より多くのことが理解できたのではないでしょうか?

例に挙げた空間線量は、私達が住む世界のほんの一部のジオ・データにすぎません。皆さんなら、どのようなジオ・データを表示して、何を知りたいでしょうか?

「ジオ・リテラシー入門」では、私達が住む世界にある「ジオ・データ」を用いて、私達の世界で発生している/した/するだろう様々な現象を「表現」・「分析」・「解釈」し、その解決方法を探ることができるリテラシーを皆さんに身に着けてもらうと思います。